柔らかな歌声が、頭上からゆるり、ゆるりと舞い降りてくる。
穏やかな日差しとともにそっと身体を包んで、心地がいい。
遅くまで酷使された身体は休息を求めていたので、久方に訪れた恋人に甘えることにした。
少し困ったように頬まれたあと、その膝に寝かされ、優しく髪を撫でられる。
子供ではないのだから…と思わないこともないが、その手があまりに心地よくて。
そのまま、この優しい手のひらにあやされることにした。
「…いい歌、だな」
眠りに融けかけた声で虚ろに呟けば、それに気付いて、その甘やかな歌声が止まる。
瞼を開いて見上げれば、こちらを優しげに見守る笑み。
「祖母が教えてくれた子守唄なんです。…もしかして、眠りの邪魔でしたか?」
「いや…」
初めて聞いたはずなのに、どこか懐かしい旋律。
言葉の意味さえわからないはずの、不思議と安らぐ歌。
そのふたつが、甘やかな声と重なりあって、そっと身体を包み込んでいく。
「もっと、歌ってくれないか…」
決して上手いとは言えないその歌が、今は何よりも愛おしい。
その声も、歌も、この身体を包み込んでくれる温もりも、すべて。
このまま眠ることができたなら、優しい夢が見られそうだ。
「…喜んで」
目を閉じて…と、どこか幼子に囁くような声で、手でそっと瞼を覆われる。
再び紡がれ始めた歌と、そっと身体をあやす手のひら。
それは遠く、幼子のころに与えられていた温もりにどこか似ている気がした。
ただ優しく、愛しい、純粋な気持ちで守られていた頃。
どんな不安も、痛みも知らないでいられた頃の記憶。
きっと、今もこの手のひらに守られている。
痛みを感じないように。穏やかな時を過ごせるように。
優しい、優しい、子守唄のように…。
「…ありがと、な」
そっと身体に触れる手に、自身のそれを絡めて。
甘やかな歌声に導かれるように、ゆっくりと眠りへ落ちていく。
今はもう、ひとりではない。
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信武ちゃんに子守唄歌ってほしかっただけ(笑)
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