「綺麗な色だよな…」
そう、ふわりと髪を撫でながら彼が言う。
「うん?」
「おまえさんの髪。綺麗な色だなと思ってな」
少し恥ずかしそうに笑いながら、触れる手はどこまでも優しく穏やか。
「暖かくて柔らかい…信武みたいな色だ」
そっと抱き寄せられ、額に唇が降りてくる。
さらさらと、指の合間から零れる音が心地いい。
「おれも、紘人さんの髪好きですよ…」
ゆるく纏められた髪に手を伸ばし、そっとゴムを外す。
はらはらと零れる髪を指で梳して、指に絡めていく。
「甘さと苦さの交った、例えるなら夜明けの空みたいな曖昧な色。
だけど、紘人さんにはよく似合ってる。…」
明とも暗とも寄り添わず、常に曖昧なまま。
夜にも朝にも属さない静寂な時間が、この髪には融けている。
ゆるりと流れるウェーブは、触れていても、気がつくと指の合間から逃げていく。
掴みどころのない、彼らしい。
「俺が夜明けなら、おまえは夕暮れだな」
世界を穏やかな眠りへと誘う陽光と、柔らかに目覚めを待つ闇夜。
曖昧な時を刻みながら、新しい時間をもたらしていく。
「…似てますね、おれたち」
「そうだな…」
互いの髪に指を絡め合ったまま、触れ合う唇。
曖昧なもの同士、互いの存在を確かめ合って。
ひとつひとつ、未来を紡いでいく。
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深い意味はない\(^o^)/
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