「律、今日はハグの日だよ」
突然そう言ってきた彼に、いつかのことを思い出したのは言うまでもなく。
「…おまえはどうしてそういう情報ばかり知っているんだ?」
「え?普通だよ」
「以前、キスの日のときも同じようなことを言われた覚えがあるのだが?」
「あれ?覚えてたんだ」
そう言っておかしそうに笑う大地に、思わずため息を零した。
以前も「キスの日」だと突然言い出し、キスを強請られた。
強請った割には結局、強引にされたわけだが。
今日もこの流れではまた同じことになるような気がする。
「まぁ、いいじゃない。それに今日はハグの日だからっ」
「わかった」
「え?」
大地が言葉を言い終えるより早くその傍らに近づき、正面から彼の首へ腕を回した。
そのままぎゅっと抱きしめると、シャツ越しに大地の体温が伝わってくる。
エアコンの効いた部屋にいるせいか、冷えた身体にはその体温が心地いい。
「り、律?」
「おまえが抱き締めろと言ったんだぞ?」
「言ったけど、まさか律からしてくれるとは思わなかったよ」
前回は大地に先手を打たれてしまったから、今度は先に動くことにした。
決してこうした触れ合いがイヤなわけではない。大地と触れ合うのは好きだと思う。
わざわざ理由をつける必要も、本当はないと彼もわかっているはずだ。
けれど、こうして強請れるのも嫌ではない。
「おれから触れたのが不満か?」
「まさか…」
耳元に笑い声が聞こえてくる。そして、大地の長い腕が背中へと回された。
さらにぎゅっと身体を密着させるように、強く引き寄せられる。
「うれしいよ、律」
「っ…」
そう甘く蕩けそう声で囁く大地に、触れ合って得た熱は違う熱さが頬に灯る。
それが少しだけ恥ずかしく感じ、少しだけ顔を逸らした。
しかし僅かにはねた心音で、きっと彼にはばれているのだろう。
”かわいい…”と甘く囁きながら、嬉しそうに髪を撫でている。
僅かに悔しさも感じたが、撫でる手の心地良さに流すことにした。
ハグにしても、キスにしても。
そういった理由をつけて強請る彼の方が、かわいいと思ったことは
今だけは内緒にしておこう。
******************************
ハグの日記念^^
[1回]
PR