留学者支援用に貸し出されている、安アパート。
風呂場とベッドルーム、軽いキッチン。これだけであれば、男一人暮らしなら事足りる。
楽器の練習は外でできるし、その方が刺激もあって好きだった。
小さな窓から、ウィーンの街を望みながら…ふと思う。
―…もう、一ヶ月かぁ…―
手には淹れ立てのコーヒー。コップは市で格安で買ったシンプルなもの。
普段はそこへミルクや砂糖を入れるが、今日は少しだけ自分流の飲み方をやめてみた。
―…こんなに会わないの、初めてだ…―
いつも聞こえているはずの声がないのは、寂しさと物足りなさが入り混じった感覚をもたらした。
気付けば6年も傍にいた。人生の4分の1は彼と共有していることになる。
会わない日がなかったわけではないが、出会ってからここまで遠く離れたのは初めてで。
同じ時差の中でなら共有できる空さえも、今は昼と夜の差ほど離れている。
声を聞きたくても、時差が邪魔をされて、時間の共有さえ叶わないでいる。
ブラックコーヒーにそっと口を寄せて、ゆっくりと口内へ含ませる・・・。
―…苦い…―
それでも彼は、この飲み方が好きだった・・・。
思い出の中の彼にそっと触れて・・・。
苦いはずのコーヒーが、少しだけ・・・甘く感じた。
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昨日の逆バージョン(笑)
ふたりの共有するものが「コーヒー」だったらいいなぁとか、そんな感じ。
王崎は甘めで、金澤はブラック。
金澤にブラックのおいしさを教えられ、王崎もブラック派になるといい^^
甘いものとブラックコーヒーは相性がいいんですよ、とか言ってスイーツ買って、準備室でふたりだけのコーヒーブレイク。王崎に釣られて金澤も甘いもの好きになるといい
あとで包みが火原あたりに見つかって騒がれてアタフタとかもいいな(笑)
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